プライバシーなどの問題もあれど、犯罪などの抑止にも役立つ、「監視カメラ」。カメラは街中に設置され、そこを往来する人々の姿を捉えています。
その監視カメラの映像を人の流れや挙動として統計的に捉える交通量調査に応用できないかと考えた人がいます。兵庫県立大学大学院 シミュレーション学研究科 博士後期課程2年の大東真利茂さんです。
交通量調査は、昔から行われています。調査の結果は店舗の立地や交通網の整備などに役立てられ、街の効率に大きく影響を及ぼします。
ただし、現在交通量調査といえばカウンターを持ったアルバイトの人々に一つ一つカウントしていただく、という調査法しかありません。
大東さんはこれを何とか「自動」で行うことができないかと考えます。着目したのは監視カメラの画像。複数のポイントでデータを取得することができ、しかも人手はかかりません。
ですが、問題もあります。「上空から見た画像」であれば、人の数をカウントすることは簡単ですが、監視カメラのように斜め上から見た画像では、人が重なったり、様々な姿の人が居たりと、人の認識が飛躍的に難しくなります。
そこで登場するのが画像解析です。大東さんは「画像から人を特定するプログラム」をコンピュータに入れ、監視カメラの映像から「何人の人がその地点を通ったか」を明らかにする分析をしています。
ポイントは、機械学習を使った「人認識」ではなく、「人の流れ」に着目し、高精度なカウントを追求している点。この手法では防犯カメラなどの「重なりの多い角度」「混雑状況下」「小さく粗い入力画像」という状況下でも解析が可能です。
現在ではカウンターでの実測値と、監視カメラの画像解析の数値の差は10%程度まで縮まっています。もちろんカウンターで計測した数値が100%正しいとは限らないため、「真の値」を知るために監視カメラの画像を見ながら実際に自分でカウンターを持って計測するなどの泥臭いこともしています。
今後の展望として、ただ単に自動カウントを行うにとどまらず、街中に設置されている防犯カメラなどへこのカウント技術を適応し
もともと大東さんは全く異なる分野である「地球科学」の分野の研究者でした。計算による地球内核の分析やGPGPUによる計算高
ところが、その研究の途上、「自分で何かを作り出すことをしたい」との思いに駆られ、分野を変更し「自分の手で作り上げたプログラム」による分析ができる、この分野に飛び込みました。
この研究のどんなところが魅力的なのですか?と聞くと、大東さんは
「プログラムと画像で人の挙動をある程度明らかにできるのは、非常に面白い」と答えていただきました。
そのうち、路上でカウンターをカチカチしているあのアルバイトを見かけることもなくなるのでしょうか。それはそれで少し寂しい気もします。
(2024/4/21更新)
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